「司会者のこだわり」第26弾です。
今回は何を教えてくれるのかな?
今回は役職の前につける『前』・『元』についてお話しします。
前回の記事
『前』と『元』の使い分け
意味
『前』と『元』の使い分けをちゃんとできますか?
どういうこと?
接頭語って言うんですけどね。
たとえば、『前・町長』と『元・町長』の使い分けです。
意味合いが変わってくるんですよ。
どっちも、今じゃないけど、過去にその役職をやってたってことよね
お!いいですね!合ってますよ。
え~、なんで知ってるの?
ふふん。あんたとは違うのよ
その調子で、使い分けを説明してください!
つ、使い分けは、ちょっと・・・
ぷぷ!ダメじゃん!
あ、あんたよりはいいわよ!
痴話ゲンカはそこらへんにして、正解を教えますね。
痴話ゲンカじゃ
ない!!!

『前』
まずは『前』ですね。
これは、一つ前の役職の人だけに付ける言葉です。
一つ前だけなの?
そうです。
二つ前はダメなの?
ダメです。
『前・町長』と言えば一つ前の町長。
『前・市長』と言えば一つ前の市長。
選挙で選ばれる役職だけでなく、会社の役職でも同じです。
『前・社長』と言えば一つ前の社長。
『前・係長』と言えば一つ前の係長。
『元』
じゃあ、二つ前はどうするの?
三つ前や四つ前の人もいるよ
そういう方達は、『元』を使って、ひとくくりで表現します。
『元・町長』は一つ前から遡って初代まで全ての町長。
『元・市長』は一つ前から初代まで全ての市長。
『元・社長』と言えば一つ前から遡って初代まで全ての社長。
『元・係長』と言えば一つ前から初代まで全ての係長。
『現』より前は全て『元』なのね
その通りです。
- 『元』は『現』以外の全ての方
- 『前』は『現』の一つ前の方
このように分けられます。
じゃあ、『前』はいらないじゃん
そうよね。全て『元』で呼べばいいわ
分かりやすいし、間違えないね!
そういうわけにはいきません。
日本語の文化として、しっかり決まっているものですからね。
細かいのね
気にする方もいますからね。
司会者は、不快な思いをする方がいないように、正しい言葉遣いをしなくてはいけません。

司会の現場での使用例
来賓挨拶
『前』や『元』を意識して使い分けなきゃいけない時はあるの?
たとえば来賓挨拶で議員を紹介する時ですね。
現職であれば気にせず紹介しますが、現職でない時はその方の現在の状況を、特に気を付けます。
その場で急いでスマホで検索して、『前』か『元』か調べることもよくあります。
その場で!?
来賓の方は忙しいので、直前になって急きょ来られる方もいますからね。
事前に調べておけないのですから、仕方ありません。
でもそういう人を紹介する時って、資料があるんじゃないの?
そうだよね。主催者が来賓を呼んでいるんだから、情報なんて事前に分かるじゃん
主催者から渡される資料ですか?
そんな物はありませんよ。
え!ないの!?
ないと言うか、なんと言うか。
その場で「『前』議員の○○さん来たよ!」と言われたり、「『元』議員○○」と書かれた紙を手渡されたり。
そんなことはあります。
あるならいいじゃん
それ通りに言えば、調べる必要ないわね
いえ、まぁ、そう言うわけでも、ないんですけどね。
??
なんか、歯切れが悪いね
いえ、こういうことを言うと申し訳ないのですが・・・。
なにさ、言っちゃいなよ
声を小さくして言いますね。
主催者に教えてもらった情報が、間違っていたことがあるんです!
声を小さくしたのに、なんで色で目立たせるの・・・
実体験なのね
もちろん主催者の皆さんは喋りのプロでないので、『前』と『元』の使い分けが分からなくても普通です。
中には、しっかりと使い分けができていて、ちゃんと教えてくださる主催者もいます。
ですが司会者としては、絶対に間違えるわけにいきません。
こちらもプロですから。
そうだなぁ。調べた方が安心だよね
間違えたら全部、司会者のせいになるしね
そんなことは些細な問題です。
もし『前』と『元』を間違えてしまったら、主催者にも迷惑を掛けます。
迷惑が掛かるほどなの?
「そんな司会者を使うな!」や「主催者がしっかりしてない!」など、どなたから何を言われるか分かりません。
『備えあれば憂いなし』
『転ばぬ先の杖』
主催者のためにも、主催者からの情報を鵜呑みにせず、実際に話す司会者がキチンと調べないといけないんです。

解散総選挙中の呼び方
『前』や『元』の呼び方について、司会者でなければ意識しないことを、もう一つお話ししましょう。
司会者でなければ?
普通の人は絶対に気にしません。
それは、解散総選挙中の議員の呼び方です。
解散総選挙・・・?
衆議院が解散して行われる選挙のことです。
簡単に説明しますね。
本当にカンタンにしてね
議員には任期があって、通常はそれを終える(任期満了)まで、議員であり続けます。
ですが衆議院のみ、解散という制度があります。
任期の途中でも解散して衆議院自体がなくなるので、全ての衆議院議員は議員じゃなくなるのです(議員としての地位を失う)。
議員じゃなくなっちゃうの?
そしてすぐに選挙が行われるのです。
それに当選すれば、再び衆議院議員になります。
なるほど。分かったよ
ではその解散総選挙中の、衆議院議員の呼び方は、どうしたらよいと思いますか?
すごい限定的な状況ね・・・
これが、実際にあったんですよ。
イベントは前もって予定してますからね。
急に解散総選挙が行われて、スケジュールが被ることは、現実的にあり得ると思いませんか?
言われてみれば、そうだなぁ
選挙で忙しくなるので、イベントにお越しにならない方もいますけどね。
逆に、約束通りお越しになる方もいます。
そんな時、現在は議員でないその方を、どのように紹介するか。
これは、司会者でなければ気にしませんよね!
たしかに
実際、何て言うのが正解なのかしら?
とりあえず『様』か『さん』をつけておけばいいでしょ!
それだけではいけません。
来賓でお越しの方ですからね。
役職を紹介するのは絶対必要です。
議員だってことを伝える?
「衆議院議員○○様」ですか?
残念。誤情報を伝えているので、間違っています。
その時は解散してて、もう議員じゃないんだもんな
じゃあ無難に『元』を付ける?
『現在』じゃない人は全て『元』って言ってたもんね
「『元』衆議院議員○○様」ですか?
考え方は良かったのですが、残念。
惜しいですね。
『元』を使えない唯一のパターンは何でしたか?
『前』を付けて紹介する時・・・?
そうです。
衆議院解散のこの場合、『現』は不在なのですが、その前にその職にいた方なので
「『前』衆議院議員」とお呼びするのが正解です。

まとめ
「『前』『元』の使い分け」についてお分かりいただけたでしょうか?
よく分かったよ
解散総選挙中の議員の呼び方なんて、教えてもらわなければ分からないことだったわ
驚きと発見があったなら、お話しした私も満足です。
僕もちゃんと覚えたよ。間違えずに使うね
あんた、使う時ないでしょ。司会者になるの?
いいや、僕は将来、衆議院議員になる!!
また口だけなんだから・・・
以上
「『前』と『元』の使い分け!解散総選挙中の議員の呼び方は?」でした♪